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っくりしてしまった。香港0街三十六番地に住んでいた竹田文彥とは、じぶんのことではないか。

隣のへやに寢ていたおかあさんも、びっくりして起きてきたが、そのテレビが、またしてもおなじことをくりかえした。

おかあさんと文彥は、だまって顔を見合わせていたが、やがて文彥があえぐような聲でいった。

「おかあさん、ぼ、ぼくのことですね」

おかあさんはだまってうなずいた。なんとなく不安そうな顔色である。

「でも、大野健蔵ってだれなの。どうしてぼくをさがしているの?」

「おかあさんにもわかりません。いままで一度もきいたことがない名まえです」

「おとうさんのお知り合いでしょうか」

「いいえ、おとうさんのお知り合いなら、みんなおかあさんが知っています。いままで一度もおとうさんから、そんなお名まえをうかがったことはありませんよ」

文彥とおかあさんは、そこでまただまって顔を見合わせてしまった。前にもいったように、文彥のおかあさんというひとは、舞臺に立っていたことがあるだけに、年より若く見え、いまはかぜをひいて多少やつれてはいるものの、たいへんきれいなひとだった。

そのきれいなおかあさんが、なにか気にかかることがあるらしく、心配そうにわなわなと、くちびるをふるわせているのが、文彥にはなんとなくみょうに思われてならなかった。

「おかあさん、ぼく、いってきましょうか」

「いくってどこへ……?」

「大野健蔵さんというひとのところへ……」

「そ、そんなあぶないこと……相手がどんなひとだかわかりもしないのに……」

「だって、テレビを見ていながら、だまっているのは悪いでしょう。ぼく、いってきます。だいじょうぶですよ。むこうへいってみて、なにかいやなことがありそうだったら、なかへはいらずに帰ってきます。それならいいでしょう」

文彥はもうすっかり決心をしていた。

少年はだれしも冒険心や、まだ見ぬ世界にあこがれる強い好奇心を持っているものだが、文彥もやっぱりそのとおりだった。

だからその日、文彥はテレビのたずねびとを知ると、やもたてもたまらなくなり、心配してひきとめるおかあさんを、いろいろとなだめて、とうとう成城の大野健蔵というひとをたずねていくことになった。

成城には友だちがいるので、まえに二、三度擼Г嬰摔�郡長趣�ⅳ搿¥餞欷思窯虺訾毪蓼à恕⒌貒恧蛘{べてきたので、一〇一七番地というあたりも、だいたい見當がついていた。

小田急の成城駅で電車をおりて、駅の北側出口から外へ出ると、そこにはいかにも學校町らしい、おちついた桜並木の、|舗《ほ》|裝《そう》|道《どう》|路《ろ》がつづいていた。桜並木のサクラはいまそろそろひらきかけているところだった。その道を十分くらい步いていくと、きゅうに家がとだえて、その先は、さびしい|武蔵《む さ し》|野《の》の景色がひろがっている。畑にはムギがあおみ、空にはヒバリがさえずっていた。そして、あちこちに點々として見えるのは、|雑《ぞう》|木《き》林にとりかこまれたワラぶきの家。

文彥はきゅうに心細くなってきた。じぶんがこれからたずねていこうという家は、こんなさびしいところにあるのだろうか……。

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