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そこで宗像博士が話したのは、つぎのようなざんげ[#「ざんげ」に傍點]話だ。

慄生徹哉と宗像博士とはそのむかし、親友だった。この慄生という男は金持ちのお坊ちゃんだったが、親類というものがひとりもなく、それで財産の管理などもいっさい、宗像博士にまかせていた。

そのうちにかれはおくさんをもらって子どもが生まれた。それがつまり道之助なのである。ところがこの道之助が二つになったとき、慄生は結核で死んだのだが、その死の間ぎわに、あとのことを宗像博士にたのんでいった。むろん博士は親友の遺言を守るつもりだったが、ただこまったことには道之助の母というのが、とてもたちのわるい女で、うかつに財産など渡せないのである。

そこで宗像博士は、道之助が大きくなるまで財産を保管していようと思い、ことばをあいまいににごして、母親のいうことを取りあげずにおいた。すると相手は、てっきり博士が財産を自分のものにするつもりだろうと早がてんして、この復しゅうはかならずするからおぼえていろと、ものすごいおどしもんくを殘して、それから間もなく子どもとともに、すがたをくらましてしまったのである。なにしろその女は、まだ正式に慄生の妻になっていなかったので、法律であらそうわけにもいかなかったのだ。

宗像博士はむろん後悔した。母親は母親として、子どもは慄生の子にちがいないのだから、なんとかしてさがし出して財産を渡してやりたいとあらゆる手をつくしさがしたがまるでゆくえがわからない。そのうちに、道之助の母親が死んだということだけは、風のたよりにわかったが、子どもはひとの手からひとの手へと渡っていって、ついきょうの日までゆくえがわからなかったのである。

「おとうさんは決して、はじめからそんな悪いことをたくらんだわけじゃない。しかし結果から見ると、いままで道之助の財産を自分のものにしていたことになる。おとうさんはそれをどんなに苦にしていたろう。だからいっこくも早く道之助をさがしだして、むかしの罪ほろぼしに、あとつぎにして財産をゆずりたいと思っていたのだが、もういけない。だめだ。道之助は世にも恐ろしいどくろ[#「どくろ」に傍點]指紋の怪盜なのだ」

鳴りやむ歌時計

はじめて聞く父の秘密に、美罰ё嬰悉嗓螭勝摔�嗓恧い郡恧Α�

――ああ気のどくなおとうさま。おとうさまが悪いのじゃないわ。みんなその母親というひとが悪いのだわ。

と、そう思うしたから、また道之助のことを考えると、ゾッとするような恐ろしさがこみあげてくる。

――もしおとうさまがそのとき、すなおに財産を渡しておいたら、あのひとも恐ろしいどろぼうなどにならずにすんだかも知れない。世のなかには、しんせつでしたことでも、思いがけない悪いことをひき起こすこともある。もし道之助がそれを知ったら、どんなに父をうらむだろう。

それを考えると美罰ё嬰悉勝螭趣玀いà翰話菠摔勝搿¥柵筏�蔬命のいたずらに、彼女はその日いちにち泣き暮らしたが、さて、その夜のこと――。

泣きぬれて寢入っていた美罰ё嬰稀⒄嬉怪肖搐韷簸韋勝�恰ⅳ郡坤勝槨癱�Qを聞いたような気がして、ハッと目がさめた。

「あら、あれ、なんの聲だったかしら?」

胸をドキドキさせながら、じっと聞き耳をたてていると、どこかでかすかなオルゴ��毪我簸�工搿%�毳穿‘ルは雨だれの音のように『蛍の光』のメロディ��

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