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あり、それを知っている広夢にはまだ負い目の気持ちを持っていた。

「渡すって?」

「もちろん、バレンタインのチョコだよ」

「答えないと駄目?」

「……それがもう答えだな」

広夢の鋭さは以前の事件でよくわかっている。深鷺は隠しても無駄だと腹をくくった。

「相馬くんの言う通りよ、悪い?」

「悪いことなんかないさ。照れくさかったら代わりに渡してやろうか」

「冗談。それくらい、自分でできるわよ」

「それはどうかな」

からかうようにそう言うと、広夢はふっと口の端をあげた。深鷺は心中を覗かれているようで落ち著かなくなる。彼の言うとおり、貴彥に直接渡せるかどうか自信がなかったのだ。

深鷺が眉根にしわを寄せると、広夢は気楽な口眨�茄預盲俊�

「なあ、深鷺。俺と賭けをしないか?」

「賭け? なにそれ」

「深鷺が今日中にチョコを渡せたらあんたの勝ち。渡せなかったら負けだ」

「……何を賭けるの?」

「勝ったらこれをやるよ」

そう言って広夢は制服のポケットから一枚の寫真を取りだし、深鷺に見せた。それに寫っている姿を彼女が凝視しようとしたところ、広夢はそれを再びポケットにしまい込む。その寫真は貴彥の寢姿だった。

「合宿の時、ふざけて撮った一枚。本人は全部回収したと思ってるようだけど」

深鷺は今見たものが頭に焼き付いてすぐに口を開けなかった。寫っていたのは意中の彼が目を椋Г袱茻o防備に眠る顔。

「どう?」

「わたしが、負けたら?」

「そうだな……今日から一週間、貴彥と口をきくなっていうのは?」

「それ、相馬くんに何か得になるの?」

「別に。ただ、面白そうだから」

広夢はにやにや笑いで深鷺の顔を見る。からかわれているとわかっているものの、深鷺はさっきの寫真をどうしても手に入れたかった。

「どうだ? 賭けに仱盲皮撙毪�俊�

その言葉にこくっと頷く。

「じゃあ期限は今日中、必ず校內で渡すこと。健闘を祈るぜ」

ふふっと笑って片手をズボンのポケットに突っ込み、広夢は教室へと戻って行った。

そうして深鷺ちひろの波亂萬丈の一日が始まった。

授業が終わるたびに深鷺は貴彥の席へ行こうとした。しかしその度になんやかんやと邪魔が入る。

二時間目の後は他のクラスの女子が集団で押しかけてきた。貴彥はあれよあれよという間に黃色い聲に包まれ、一人ひとりにぺこぺこと頭を下げていた。そして女子たちは嵐のように去っていった。後に殘ったのは色とりどりの包裝紙に包まれたチョコレ��趣蝸洹1摔位�紊悉纖�宋銫蛑盲�墮gがないほどであった。

三時間目の後、今度こそと意を決して立ち上がった深鷺はいきなり男子生徒に話しかけられた。相手は犬飼茅(かや)。級友でもあり演劇部員でもある彼は、深鷺より數センチ背が低く、顔も子どもっぽくて遠目には女の子に見えないこともない。彼もまた以前の事件の関係者で、深鷺にとっては頭の上がらない存在である。

「深鷺、ちょっと頼みがあるんだけどいい?」

「なに?」

「今度演じる役でさ、ギタ��蚴工銫勝�悚

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